すずは柔らかい金属なのですが、すずめっきを曲げると割れてしまいます
- 機能
すずは銀白色で非常に柔らかい金属で、かつ電気伝導性もよいので、銅素材に対する接点部品に多く用いられます。すずをめっきした後、曲げカシメでハーネス(銅線)をカシメて止める使い方もあるのですが、この時にめっき皮膜が割れてしまうことがあります。
お客様からのお問い合わせで、「すずは柔らかい金属なのに、なぜ割れてしまうことがあるのか?」というご質問を受けるケースが多く寄せられます。実は、めっきは、ニッケルめっきも亜鉛めっきもすずめっきもそれ自体はさほど硬くないのですが、外観の平滑さを向上させ、光沢感や見栄えをよくする目的で光沢剤というものが微量に添加されており、この光沢剤成分がめっき皮膜の結晶のズレをくさびのように止めてしまうため、めっき皮膜が硬くなり、曲げカシメでクラック(割れ)が発生することがあるのです。
サン工業の場合、すずめっきは、光沢すずめっき(酸性浴)、無光沢すずめっき(アルカリ浴)、無電解すずめっき(酸性浴)の3種類をめっきしており、このうち、無光沢すずめっきや無電解すずめっきは曲げカシメでの割れやクラックは発生しません。
逆に、挿抜のあるピン形状の端子などは、耐摩耗性向上のため、光沢すずめっきを使った方がよいケースもあります。お客様のご使用用途に応じてベストなめっきを提案させていただきます。
図:SPCCの板に10μmめっきし、90度に折り曲げた部分を電子顕微鏡で観察
