サン工業株式会社

めっきQ&A

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アルミニウムへめっきはできる?

  • 素材

めっきと言えば、鉄や真鍮などに行うのが一般的ですが、最近は、いろいろの素材にめっきするという要望が増えてきています。なかでも、アルミニウムは、重量で鉄の約1/3と軽量でありながら、銅やマグネシウムなどの金属を添加することで、強度を上げることが可能です。また、機械加工性が良好なこと、電気抵抗が低いこと、熱伝導性に優れていることなどから、最近では、自動車の電装系の放熱基板やハーネスへの応用が始まっています。

サン工業では、1990年代から、ハードディスクドライブのアルミニウム製メカパーツへの無電解ニッケルめっきを実施しており、アルミニウム上の各種めっき処理についての技術を蓄積してきました。

現在では、アルミニウム及びアルミニウム合金に対して、無電解ニッケルめっきの他、カニフロン(滑り性や離型性が良好なテフロン複合無電解ニッケルめっき)、無電解ニッケルホウ素(Ni-B、無電解ニッケルめっきよりも硬く、低摩擦抵抗)、カニクロ(無電解ニッケルめっきを下地めっきした後、硬質クロムめっきを行う。硬さと耐食性、寸法安定性を兼ね備えた多層めっき)、電気ニッケルめっき(無電解下地の光沢ニッケルめっき)、黒色無電解ニッケルめっき(無電解ニッケルめっきの表面を黒色化したもの)の量産処理の他、アルミ素材への直接銅めっきや直接クロムめっきの開発に成功しました。

では、どのような素材にめっきできるのでしょうか?

アルミニウム上の無電解ニッケルめっきは、通常、A5052などのプレス品が一番簡単にめっきできます。弊社では、これらのほかにA2000系の切削材料や、A6000系、7000系の材料にもめっきすることがあります。そのほかには、ADC12などのダイカストも量産で処理しています。

今回は、これらアルミニウム素材へめっきを行う場合の各工程について紹介していきます。

脱脂工程

通常の鉄やステンレスへの脱脂工程では、水酸化ナトリウムと界面活性剤を用いた高温で強アルカリの脱脂液が用いられます。しかし、アルミニウムは、両性金属という種類に分類される、酸にもアルカリにも溶解するという特殊な金属です。よって、強アルカリの脱脂剤では、製品自体が溶けてしまうため、使用することができません。アルミニウム用の脱脂剤は、水酸化ナトウリムの代わりに、ケイ酸ナトリウムやリン酸ナトウリムといった弱アルカリが使用されています。リン酸ナトウリムは、弱アルカリですが、油分の乳化分散作用が優れているため、弱アルカリでもそこそこの脱脂効果が期待できるのです。

また、アルミニウムのめっき工程には、アルカリ性のエッチング液やジンケート液がありますので、工程内で初段脱脂をカバーする効果も期待できます。ただし、袋穴やタップ穴のような油分のたまりやすい切削加工品、ダイカスト品については、有機溶媒での脱脂を併用したり、ウォータージェットを用いた穴内部の洗浄を行うことが、良好なめっきとするためのポイントになってきます。

エッチング工程

アルミニウムは両性金属のため、酸にもアルカリにも溶解してしまいます。一般に脱脂液は、強いアルカリ性ですので、アルミニウムも溶解してしまう可能性があります。よって、アルミ用の脱脂材は、pHを下げ、乳化分散しやすいリン酸ナトウリム系の脱脂剤を用いますが、脱脂の効果がいまひとつのため、溶剤脱脂などを併用する必要があります。

しかし、アルミニウムの前処理工程の一つに、エッチングという工程を加えることで、めっきの密着性の向上だけでなく、予備的な脱脂も行なうことが可能になります。アルミニウムには、表面に非常に厚い酸化膜(Al2O3)が存在しているため、空気中では腐食しにくいですが、酸化皮膜の上にはめっきすることができません。この酸化皮膜を除去する工程の一つがエッチング工程です。エッチングは強アルカリの溶液を高温で使用し、アルミニウム上の生成した酸化皮膜を除去します。脱脂液はアルカリ性のため、油脂の乳化分散が可能なのですが、エッチング液もアルカリ性ですので、脱脂の効果があります。あわせて、エッチングでの溶解時に、強烈に発生する水素ガスで素材表面を撹拌し、汚れや異物の除去も行なうことができます。

このように、めっき工程の前処理として、エッチングは非常に有効なのですが、

  • 表面が荒くなってしまい、光沢感が無くなる
  • アルカリに溶解しない、シリカや銅などの合金成分が溶け残り、ざらつきを生じることがある
  • 溶解速度が速いため、寸法公差の厳しい製品には不向き

などのデメリットも発生するため、製品によっては、エッチングの時間や温度、エッチングの有無には十分配慮することが重要です。

スマット除去工程

アルミニウムのめっきでは、前工程が重要で、

1、いかにして酸化被膜と取り除くか
2、表面の異物を除去してジンケートまでもっていくか

が重要なキーポイントになります。

エッチング工程では、アルカリ溶液による酸化皮膜除去について説明しましたが、実は、アルミニウムは、不純物や合金成分として、銅やケイ素などを含んでいます。これらは、アルカリエッチングでは除去ができないため、そのままで前処理を行うと、外観不良(めっきムラ、凸凹)や密着不良が生じてしまいます。

そこで、アルカリエッチングを行ったあと、ケイ素などの不純物除去には、フッ素を含んだ酸性の溶液に、銅合金除去には硝酸を含んだ酸性の溶液で、これらを除去します。めっき工程においては、酸処理やエッチング処理のあと、表面に残るこのような不純物のことを「スマット」と呼んでおり、スマットを取り除く工程のことを「スマット除去」という名称で呼んでいます。一般にはあまり使用しない用語ですが、このスマット除去をいかに上手に行うか、というところが、めっきメーカーのノウハウになっていることが多いようです。

ジンケート工程

ここまでの様々な前工程を踏んでも良好なめっきはできません。アルミニウムは大変活性な金属ですので、空気中や水中の酸素と反応して、簡単に酸化被膜を形成してしまいます。この酸化皮膜はめっきの密着性を阻害してしまうため、酸化被膜を形成させない方法として、ジンケート処理と呼ばれる亜鉛の置換めっきを行います。

置換めっきとは、表面のアルミニウムが溶けて、溶けたときに出る電子によって亜鉛を還元しアルミニウム上へ析出させます。よってアルミニウムと置換めっきされた亜鉛の間には酸化被膜が介在しないことになるのです。

また、この置換めっきは1回の置換めっきよりも、置換めっきを剥離して再度置換めっきを行う2回置換めっきの方が優れた密着性を得ることができます。これはアルミニウムの表面の電位を均一にするためと言われていて、このような2回置換めっきをすることをダブルジンケートと呼ばれています。

めっき

このような工程を進んで、ようやくアルミニウムの前処理ができ、その後に銅めっきやニッケルめっき、無電解ニッケルを処理することができます。一般的には最も相性が良いとされる無電解ニッケルめっきを行うことが多いですが、サン工業では銅めっきも対応しています。

めっき専業社によっては、説明した一般工程以外にも素材別に独自の前処理を行っているところもあり、前処理の最適な選択がめっき業社個々のノウハウとなっています。

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