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めっきQ&A

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めっき前処理用語:「スマットとデスマット(Smut and Desmutting)」って何?

  • 用語解説

 めっきの前工程は、鉄や銅・銅合金、アルミ、ステンレスなど、いろいろな金属によって違っているのですが、基本的には、脱脂して、活性化(酸処理)して、めっきする、というところはどれも同じです。

 どのように脱脂するか?で、

 ・浸漬脱脂法(アルカリ脱脂、酸性脱脂、溶剤脱脂、超音波脱脂、、、)

 ・電解脱脂法(陽極電解脱脂、陰極電解脱脂、PR電解脱脂)

のような種類があります。

 活性化、というのは、めっきが付きやすいように、金属の表面を異物や酸化皮膜の無い状態にすることで、一般的には酸溶液を使用するのですが、前処理の最初の方で実施するサビ取り的な濃い酸処理ではなく、薄い酸で短時間で処理するのが一般的です。

 ただ、いいめっきにするためには、これだけでは不十分で、「デスマット(Desmutting)」と呼ぶ工程を酸処理の後に設けている場合があります。脱脂や酸処理、活性化、というのはイメージしやすいのですが、「デスマット(Desmutting)」という用語は少しわかりにくいですので、今回はこの「デスマット(Desmutting)」を解説したいと思います。


 例えば、アルミニウムの前処理では、脱脂後、アルカリエッチングで酸化皮膜を除去した後にめっき工程に入っていくのですが、A2000系材料などは、図のようにアルミニウムの他に銅(図中の赤い粒粒)が多量に含まれています。

 これをアルカリエッチングすると、銅はアルカリには溶解しませんので、表面に堆積した状態となりますが、堆積した状態では凸凹が発生したり密着が悪くなったりと、良いめっきになりません。この酸化皮膜やサビ取りのための強い酸処理やアルカリ処理後に表面に残る微粒子を「スマット(smut)」とよび、この「スマット」を除去する工程のことをスマット除去といいます。このスマット除去のことをめっき工程では、「デスマット」と呼んでいます。

 スマットが残ったままめっきすると、図のように表面が凸凹してしまい、良い状態の表面にすることができません。

 実際にA2000系の材料をアルカリエッチングすると、表面が銅色の「スマット」に覆われていることがお分かりいただけると思います。

 特にアルミニウムの場合は、銅のスマット(A2017など)やケイ素のスマット(A6061など)が生じてしまいますので、これをめっきまでにどういうふうに「デスマット」するかが、良いめっきをする上での重要なポイントとなります。

 写真はA6000系材料の表面に残るケイ素のスマットのSEM写真です。

 実際にこのようなスマットが残ったことによるめっきの凸部分をFIB(収束イオンビーム加工機)で断面カットして観察すると、凸の核のところに微粒子が残っているのを確認することができました。

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