サン工業株式会社

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【第36回】銀めっきの秘密 その2

  • 銀めっきの秘密

今回は銀めっきをどう硬くするかというお話。純銀の銀めっきの硬度は、HV(ビッカース硬度)60〜80ほどである。その表面は梨地のようで光沢はなく、爪で傷つくくらい軟らかい。そこで銀以外の金属をめっき液に加えてあげる。まずは原子番号34セレンの出番だ。こいつは少しでも効いて、硬度はHV80〜100に上昇する。装飾用での利用も多く、フルートなど金管楽器などにも用いられるそうだ。

ただ、たくさん入れたらより硬くなるわけではない。ここから先は別の金属の仕事である。奴の名は原子番号51アンチモン。おぉ!新手のポケモンみたいで格好いい。それに背番号34の山本昌は引退してしまったけれど、51のイチローはまだ現役メジャーリーガーだ。銀めっきスペシャリストの宮川さんが、「それを入れて硬くなるほどギランギランする」と目をキラキラさせていたのは、アンチモンであった。セレンに加えアンチモンを入れた銀めっきは、HV120〜200だという。大電流を流せる銀の性質に耐摩耗性をプラスすることで、コネクター端子やバネ端子にはもってこいなのだ。

HV値に幅があるのは、アンチモンの量が増加することで、硬さが増すからだ。サン工業では、HV150までを硬質銀めっき、HV200前後のものを超硬質銀めっきと区別して、用途に応じた最適なめっきを提供する。ただし、硬くなるからといって、無闇にアンチモンを投入するわけにはいかない。まず、電気伝導性が悪くなる。これでは銀を選んだ意味がない。他にも問題がある。アンチモンが増えると、液の劣化とともに硬さが低下する。めっき後、時間経過とともに軟らかくなってしまう。お客様の中には、「硬さは必要だが、アンチモンの量を抑えてくれ」との声もあるとか。おいおい大丈夫なのかアンチモン。

心配ご無用。僕らには宮川さんがついている。「実は液中には有効なアンチモンと働かないアンチモンがあります」。つまり、投入したアンチモンがすべて硬い銀めっきに貢献しない。イチローだって10割は打てないんだから仕方ない。そこで重要になるのが、液の条件管理とともに、めっき後の被膜表面のアンチモン濃度を管理することだ。

このコーナーでも以前紹介したが、開発課の隣には多様な検査や分析ができる表面解析室がある。ここで銀めっきの被膜の状態を、電子顕微鏡やGDOES(グロー放電発行分光分析装置)を使って調べることができる。めっき液のアンチモン濃度はともかく、被膜中のそれを管理してめっきできるメーカーは少ない。しかし宮川さんは、実際に硬質めっきに含まれるアンチモン量を正確なデータとして示せるから、お客様に硬度の安定した銀めっきを提供できる。それがサン工業の強みだ。

電気自動車での利用をはじめ、バッテリーに注目が集まると、端子への関心も高まる。今後さらに高硬度銀めっきへの注目も集まる。宮川さんは今、アンチモンに代わる金属の利用も含め、新しい超硬質銀めっき「宮川スペシャル」の開発にも取り組んでいる。


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