巣穴のある材料に対する亜鉛めっき
顧客のお困りごと
六角ボルトの亜鉛めっき(三価黒クロメート)を他社で処理していたが、表面に斑点上の腐食が発生して困っていた。しかし材料不良ということで取り合ってもらえないことから、サン工業に原因の調査と改善ができないかの問い合わせがあった。

亜鉛めっきの表面の白い腐食物が発生して外観上も機能上も使用できない。
既存めっきメーカーでは材料不良ということで、原因や改善方法を教えてもらえない。
サン工業の提案
調査した結果、ボルトの材料は六角引き抜き材で、腐食発生場所を剥離したところ、巣穴(微小で深い割れやクラック)が多数発生していた。このことから、めっき時のアルカリ成分が巣穴に染み込んで、めっき後に染み出してくることで、亜鉛めっきの表面を腐食させていることが分かった。
亜鉛めっきには、シアン浴、ジンケート浴、酸性浴の3種類が一般的に使用されているが、シアン浴やジンケート浴では、こういった巣穴起因の不良が、引き抜き棒材、SUM材で発生することがあります。こういった場合には酸性浴(酸性浴といっても実際にはほぼ中性)でめっきすることで、点状の腐食を抑えることが可能です。
また、加工での改善ができるなら、引き抜き面のあるところを切削で削り、全切削で加工することで、このような腐食不良を防止することができます。

素材表面の引く抜き面に巣穴が多く、染み込んだめっき液が亜鉛めっき表面を腐食させる。
シアン浴やジンケート浴はこういった巣穴不良がでることがある。
酸性浴で亜鉛めっきを行うことで、巣穴からの染み出しによる腐食を改善することができる。
解決できたこと(成果)
巣穴のある材料に対して、点状の腐食物が発生しにくい表面処理を提供できた。三価黒色クロメートは、一般にはジンケート浴の亜鉛めっきをもしないと、きれいな漆黒にならないことから、下地の酸性亜鉛めっきを行い、表層にジンケート浴を薄くつけることで耐食性と外観を調律することができた。
問題解決に関わり提供できる技術等の優位点
サン工業は、どれか1つのめっきに絞るのではなく、お客様のご要望にお応えする形で、さまざまのめっき浴を持っています。例えば、亜鉛めっきであれば、「ジンケート浴」「シアン浴」「酸性浴」の3つを持っています。「シアン浴」は耐ウィスカー性能や二次加工性能が優れていますが、環境負荷の観点から使えるめっきメーカーが減少しています。サン工業では、排水処理で酸化分解することで、無害化できるため、この3つの亜鉛めっき浴を特性に分けて使い分けることができるのです。
担当者の声
亜鉛めっきの外観不良は、素材起因、環境起因、手扱い起因など、さまざまの要因があるため、原因の特定は難しいのですが、過去にSUM材(切削用の棒材)で同様の不具合対策をした経験から、お客様の課題を解決することができました。めっき不良が出ているが、原因がわからない、なとでお困りの際は、一度ご相談いただければと思います。