Q:金めっきってどんな種類があるの?
- 金メッキ
A:用途や性能ニーズに合わせて、金めっきには多くのタイプが存在します。
金めっきは「高い耐食性」「優れた導電性」「安定した接触抵抗」「はんだ付けの良さ」など、優れた特性を持つ代表的な表面処理です。その高い信頼性から、電子部品・半導体・コネクタ・精密機器・通信デバイス・医療機器・装飾品など、多岐にわたる分野で利用されています。
しかし、ひと口に“金めっき”と言っても、実は 用途別に性質の異なる数多くの種類 が存在し、膜厚・硬度・結晶構造・添加元素・工程条件など、品質を大きく左右する要素が多くあります。
要求特性に合わない種類を選ぶと、接触不良・はんだ不良・摩耗・変色・過剰コストなど、製品上のトラブルにつながる可能性もあります。
そこで本記事では、産業用途で使われる主要な金めっきについて、「特徴」「向いている用途」「注意点」 を含めて詳しく解説します。
サン工業で実際に量産や試作で対応しているプロセスを含めて、メーカー視点で分かりやすくまとめました。
1. 純金めっき(純Au:通常99.7%以上)
■特徴
- 金含有量が最も高く、耐食性・導電性ともにトップクラス
- 接触抵抗が安定しており、信頼性が非常に高い
- 変色がほとんどなく、長期安定性に優れる
- はんだ付け性が良く、実装工程との相性が良い
純金めっきは、不純物が極めて少ないため電気特性が安定し、耐食環境下でも性能が落ちにくいのが特長
■主な用途
- プリント基板(フラッシュ金など)
- 半導体UBM
- 半導体リードフレーム
- 高信頼性電子部品(車載・通信・医療など)
2. 硬質金めっき(Au-Co・Au-Ni系)
■ 特徴
- コバルト(Co)やニッケル(Ni)を微量添加
- 純金より硬度が高く、耐摩耗性が大幅に向上
- コネクタ端子の抜き挿し、摺動接点に適合
- 摩擦による摩耗・移行を抑制できる
硬質金めっきは耐摩耗性に優れるため、摺動回数が多い部品では最も多用されます。
■ 主な用途
- リードフレーム
- 半導体検査装置のプローブピン
- スマートフォン・車載コネクタ
- スイッチ接点
- 音響端子
3. 置換金めっき(置換Au:Pd/Ni上など)
■ 特徴
- パラジウムやニッケルめっき上に置換反応で析出
- 膜厚は薄いが均一性が高く、微細パッドに適合
- ワイヤボンディング用途で広く採用
- 厚付けには不向き
置換反応は金属を溶解しながら金が析出するため、めっき厚の均一性に優れます。
■ 主な用途
- BGAパッド
- ワイヤボンディングパッド
- 微細電極・微小配線部品
4. 無電解金めっき(置換還元Au/還元Au)
■ 特徴
- 電流を使わず、化学反応で金を析出
- 純金よりも薄膜だが、膜厚均一性が非常に高い
- ニッケル・パラジウム上に薄いAu層を形成
- ENIGの最終仕上げとして広く普及
■ 主な用途
- ENIG(無電解Ni/無電解Au)基板
- センサー端子
- 微小接点
5.高温はんだ向け金めっき(Au-Snはんだ付け工程向け)
■ 特徴
- Snとの溶解量・反応量を適切に制御
- 過剰なAu溶解を避けることで脆化を防止
- 金膜厚の最適化が重要(光デバイスで特に重要)
■主な用途
- 光デバイス
- パワーモジュール
- センサー部品の接合
6. 装飾用金めっき(カラー調整タイプ)
■特徴
- 外観(色調・風合い)を重視
- Cu・Ag・Ni・Feなどを添加し色味を調整
- 純金色、淡金色、ピンクゴールド、青金色など多様
- 耐摩耗性は工業用硬質金ほど高くない
■主な用途
- 時計部品
- アクセサリー
- 高級文具
- 装飾雑貨
7. 厚付け金めっき(高厚膜Au)
■特徴
- 数十µm級の厚膜が可能
- 高耐食性・優れた導電性を長期間維持
- コストは高めだが、信頼性を優先する用途に最適
■主な用途
- 高信頼コネクタ
- 高周波部品
- 医療用電極
- 航空宇宙・海洋用途
金めっきに関する主な規格(日本・海外)
金めっきは電子部品・端子・リードフレームなど、規格に基づいて膜厚や組成を管理することが多く、以下の規格が実務でよく使用されます。
● 日本(JIS規格)
JIS H 8620 : 工業用金及び金合金めっき
- 工業用目的(電機、電子、機械、その他機能的部品)の、有効面の膜厚2μm以上の金及び金合金電気めっきについて規定
- 品質、素地、下地メッキ、試験方法(厚さ、含有率、耐食性試験)などを規定している
JIS H 0401:めっき膜厚測定方法
- XRF、マイクロセクションなど測定手法の規格化
● アメリカ(ASTM規格 / MIL規格)
ASTM B488:金めっき規格
- 世界で最も参照される金めっき規格の1つ
- 金純度(Type I〜III)、膜厚クラス(0.1〜2.5µm以上)を規定
- 特にコネクタや電子部品メーカーが多用
MIL-DTL-45204:軍需、航空宇宙向け金めっき規格(旧規格 MIL-G-45204C)
- 厳格な信頼性要求に基づいた軍用規格
- 航空宇宙・防衛向けの金めっきに採用
- 金純度(Type I〜III)、硬さ(Grade A〜C)、膜厚クラス(Class00~6)を規定
※ Grade区分や上限値は仕様版数や補足規定により異なります。
● 国際規格(IEC)
ISO4523-1985E
Electrodeposited coatings of gold and gold alloys
— Specifications and test methods
- 工業用金および金合金の電気めっきに関する国際規格
- めっきの種類(純金・金合金)、膜厚区分、外観、密着性、耐食性などを規定
- 試験方法(膜厚測定、外観検査、密着性評価など)を包含
- ヨーロッパを中心に、JIS H 8620 や ASTM B488 のベースとして参照されることが多い
※ 現在は新規改訂されておらず、各国規格(JIS・ASTM・EN)に置き換えて運用されるケースが多い
IEC 60068 系:信頼性試験
- 国際電気標準会議が作成した国際試験規格
- 温度(高温、低温)・湿度試験・振動試験、衝撃試験、塩水噴霧または腐食試験、ダストテスト、光照射または太陽放射テスト、電磁適合性(EMC)試験、低空気圧テスト
- 金めっき端子の耐久性評価で使用される
- 金めっきの「膜品質そのもの」ではなく、「製品としての信頼性評価」に使用される試験規格
まとめ:用途に合わせた最適な“金めっき選択”が重要です
金めっきは、一見どれも同じように見えて実は 種類によって性能が大きく異なる 表面処理です。
「導電性を最優先したいのか」「摩耗に強くしたいのか」「はんだ付け性が重要なのか」「コストとのバランスは?」など、使用目的によって最適なプロセスが変わります。
サン工業では、純金・硬質金・無電解金・置換金・厚付け金など、多種類の金めっきプロセスの量産・試作実績から、お客様の製品仕様・用途・コスト要件に合わせて 最適なめっき仕様をご提案 しています。
微細電子部品から中型機構部品まで幅広く対応できるため、金めっきに関してお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。

