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開発課ってどんなとこ?

【第40回】「10年分のひきだし~児玉主任②」

10年間のキャリアのなかでは、現場から「開発で(条件を)確立してからもってこい」と突き返されたこともある。児玉さんにもきっと、誰にも見せない涙があった。悔しくて眠れない夜があった。平らな道ではなかったけれど、でも確かに歩んできた。

そして、いくつもの日々を越え、たどり着いた今がある。児玉さんが最近立ち上げたラインは、現在のサン工業の製品別売上高で5本の指に入る売上を稼ぎ出す。アルミに無電解めっきを施し、さらに金めっきする製品で、いちばん最初の試作から量産へ、そして自動化ラインへと、そのすべてに児玉さんは関わってきた。

思わず、ゆずの「栄光への架橋」を引用したくなったのは、開発の仕事も、自分の足で歩くことでしか得られないものがあるからだ。架け橋は誰かに架けてもらうもんじゃない。その道を歩き続ける者だけが、自分の道のその先をつくることができる。新しい課題にぶつかったとき、「あれが使えるんじゃないか」というときの「あれ」をたくさん持っている技術者の方が、きっとより先へ進める。

この製品もダイキャスト部品の巣穴対策など、量産立ち上げまでには苦労した。ラインができた後も、お客様にとってのコストを抑えるため金めっき量をなるべく少なくする方法を探るなど改善は続く。あのときやったあの処理を自分のひきだしから引っ張り出して。

そんな彼が今テーマにしている一つが樹脂めっきだ。3Dプリンターで成型したものにめっきを施せないか考えているという。従来の方法では成形できない形状も図面通りに形にできることから、3Dプリンターは近年注目されている。だが、そこにめっきするとなると材料が限られてしまう。面白そうなテーマだ。またどこかでレポートしてみたい。

ところで、サン工業開発部にお客様から寄せられるリクエストには、「エビデンスを出してくれ」というのが近頃増えてきたという。なぜその方法で処理すると結果がよくなるのかデータも一緒に示せということ。同社のお客様が、そのお客様に説明するために必要なのだろう。

実はこれ、同課にとって大きなチャンスだ。一般にめっき処理は最終工程に近いから、仕様決めはどうしても後の方になる。ところが、自分たちの仕事の確かさを明確なエビデンスとともにお客様に示すことで、メーカーの開発部隊にサン工業の名を売ることができる。その結果、製品設計の段階から関わるチャンスも掴めるかもしれない。いや是非とも掴みたい、河合課長や児玉主任をはじめ、メンバーが日々取り組むのはそのための土台づくりだ。

「お前の仕事の結果はいつ出るんだ」。昔自分も言われたことを言われている後輩を、児玉さんは心の中で励ましている。君も迷わずに進めばいいと。

交配を教える児玉さん