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硬いめっきの、やわらかなお話

【第32回】硬いめっきの、やわらかなお話 その4

量産されているめっきの中で、最も硬く耐摩耗性に優れるのは、硬質クロムめっきだと以前書いた。でも、どんなに優れたものにもどこかに欠点はある。ことわざにも「無くて七癖」って言うじゃない。

硬質クロムめっきの弱みは、第一に、とても毒性が強く環境負荷物質でもある6価クロムを使用すること。第二に、めっき厚のバラツキがさまざまなめっきの中でも特に大きいこと。おいおい、それってたいそうな欠点じゃないか。でもね、「色の白いは七難隠す」とはちょっと違うが、何か一つ飛び抜けて秀でていたら他は目をつぶっておこうというのは世の常だったりする。それほど硬質クロムめっきは偉大だ。

一方で世の中には、「やっぱりまずいんじゃない?」と課題に向き合いその克服に取り組む人がいる。「Yes, I can ! 」がポリシーのサン工業もそう。今回は第一の課題、6価クロムをどうするかについて。お話しは、今年3人目のお子さんが生まれる予定で、ますます笑顔に磨きがかかった河合陽賢開発課長さんである。

RoHSやELVといった指令で、特定の有害物質の使用が規制されていることはご存知だろう。6価クロムもこれに含まれる。ただし、めっき処理後の表面は金属クロムのみで、6価クロムを含まない。クロム単体は毒性がないどころか、人間にとって必須の栄養素だ。

とはいえ、めっき液の中に6価クロムがあることは確か。使わないに越したことはない。そこで近年代替技術として注目されているのが3価クロムだ。6価だの3価だの細かい説明は省く。書いている本人にうまく説明できる自信がないので、クロムの化合物のうち、酸化数が+6なのが6価クロム、+3なのが3価クロムとだけ言っておきます。

3価クロムを用いためっきは、装飾用としては以前から使われていた。工業用として実用化していないのは、めっきを厚くできないから。3価クロムめっきは2μm以上NGだったのだ。これでは、ときに10μmの厚さを求められる硬質クロムめっきには使えない。

今、河合さんら開発課の面々が挑戦しているのは、3価クロムをベースに6価クロムの量を10分の1に減らした新しいめっき液での高硬度クロムめっきである。これがとんでもなくすごい。めっきした後で熱処理を加えると、Hvが1,800以上となり、従来の硬質クロムめっきの硬度をはるかにしのぐのだ。しかも、内部応力が小さいから、クラックも入りにくいのだという。

 

硬度を計測する河合課長

でも量産化への道は遠いと河合さんは言う。3価クロムでも硬くできることは分かった。次は、厚くする技術を確立しなくてはならない。安定した品質を保つ液の管理も難しい。越えるべきハードルはまだあるのだ。だが行く手に困難が待ち受けるほど、燃えあがるのが技術者魂。必ずできると信じ、開発課の面々のチャレンジは続く。乞うご期待。