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硬いめっきの、やわらかなお話

【第33回】硬いめっきの、やわらかなお話 その5

今回は、硬質クロムめっきの弱点その二、めっき厚のバラツキをどうするかについて。電気めっきにバラツキはつきもの、わけても硬質クロムめっきのそれは特に大きい、厚いところには厚くつくくせに、薄いところは見向きもしない。反骨精神がないと言おうか、恭順と言おうか、右へ倣へ的なのだ。でも誤解なきよう。何遍でも言うが、それでも硬質クロムめっきの硬くて耐摩耗性が良いという優位は揺るがない。

この利点を保ったまま、寸法精度を出すことはできないか。サン工業も含めめっき屋さんは知恵を絞るし、汗もかく。前に紹介した「よけ」(セカンドシーズンプロローグ参照)はそんな頑張りの一例だ。 それでもお客様の求める寸法が出なかったら、他の方法に置き換える。ご登場と相成るのは、「無電解ニッケルめっき」である。硬質クロムめっきと比較すると、耐摩耗性では悪いが、硬度についてはめっき後の熱処理で同等に上げることができる。特にサン工業は無電解ニッケルめっきが得意ときている。ラインの数も多く、さまざまな素材に安定した品質のめっきを施せるのも強みだ。

「また、無電解ニッケルめっきは、テフロンの微粒子を入れることができます」。説明してくれたのは、開発課の児玉主任。以前も登場いただいた硬いめっきのスペシャリストである。テフロンが商品名であることは皆さんご存知の通り。この樹脂の正式名称はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と言う。児玉さんが教えてくれた。僕みたいな素人はこういう小難しげな豆知識を知るとすぐ披露したくなる。困ったものだ。

PTFE複合無電解めっき(通称カニフロン、訪問記の特殊無電解めっき参照)は、滑り性や耐摩耗性、離型性、寸法精度が良好で、被膜が硬いという特徴をもつ。そう聞いて、こびりつかないフライパンのCMを思い出してしまう自分はやっぱり素人に他ならない。

サン工業では、アルミニウムや鉄系素材も含め、あらゆる素材にカニフロンを施すことができる。しかも、テフロン含有量の違う4つのタイプを用意している点がポイントだ。PTFE複合無電解めっきでは、滑り性と硬さがトレイドオフの関係にあり、テフロンを入れる量により特性が変わるらしい。そこで、硬さよりも滑りを優先する場合はテフロンを多く、硬さを優先する場合はその量を少なくする。「お客様が求める仕様に合う最適条件をお出ししています」そう児玉さんは胸を張る。

ちなみにここに添えた電子顕微鏡写真は、サン工業社内で撮影された。自社でできる限り分析装置を備え、的確な技術情報を提供し、厳密なデータで自社技術を語ることができる。それが同社へ寄せるお客様の期待値を上げているというわけ。

電子顕微鏡で厳密なデータを確認する児玉主任

種類SタイプAタイプMタイプBタイプ
テフロン含有量 30 ~ 35Vol% 20 ~ 25Vol% 10 ~ 15Vol% 3 ~ 7Vol%
硬さ
(Hv)
めっきのまま 200 ~ 250 250 ~ 350 350 ~ 400 400 ~ 500
熱処理 300 ~ 350 400 ~ 600 650 ~ 700 750 ~ 900
摩擦係数μ 0.07 ~ 0.08 0.08 ~ 0.10 0.10 ~ 0.12 0.10 ~ 0.12
処理可能サイズ W150 x H200 W150 x H200 W150 x H200 W350 x H900

対応素材:アルミニウム、鉄、ステンレス、銅系素材、金型材料など
応用分野:工作機械、金型、医療関係

 

今回で硬いめっきのお話しはお終いにして、次回は金めっきについてお届けします。