ページトップへ

カーボン・ナノ・チューブを銀めっきに混ぜたら……

【第6回】CNT複合銀めっき……なにそれ?

サン工業ってどんなめっきの仕事ができるの?―それを訪ね歩く旅の新シリーズは「CNT複合銀めっき」。

でも、「CNTなんとか」と言ったって、違う業界の人には分からないよね。そこで、開発課の河合陽賢(アキマサ)さんに聞きました。河合さん、CNTって何か教えて?

「『CNT』っていうのはカーボン・ナノ・チューブの略です。現在、銀めっきは、電子部品の端子やコネクターの部品に多く使用されています。銀は、金属の中で電気の伝導性が一番優れているので、それでめっきすることが多いわけです。その銀めっきの中に、近年有名になっているカーボン・ナノ・チューブを混ぜ込んでめっきする技術がCNT複合銀めっきで、07年に当社が新開発したんです」

フ~ン……??? カーボン・ナノ・チューブって、信州大学工学部の遠藤守信教授が大量生産技術を開発して一躍有名になったものだよね。たしか「遠藤ファイバー」とか呼ばれているよね。でも、それをめっきに混ぜるとどういう効果が期待できるっていうの?

「CNTは超微細の炭素がつながって筒状の形をつくっているもので、高い電流密度に耐える力が銅の1000倍以上、熱の伝導性が銅の10倍以上、鋼鉄の20倍と言われる強度、アルミニウムの半分と言われる重さ―などの特長を持つ新素材です。発光ダイオードや集積回路、半導体などへの応用が研究されていますが、この新素材=CNTの特性をめっきに生かせないかと考えて、遠藤守信教授や新井進准教授と共に研究を進めてきていたのです」

は?はぁ……それで、銀めっきに混ぜるとどうなるの?

「銀はさっきも言ったように電気の伝導性が金属の中で最も優れており、かつ、はんだ付けがしやすいとか他の金属に引っ付きやすい(ボンディング性が良い)とかの性質があります。だから、いろいろな電子部品のめっきに使用されています。でも、そのままでは柔らかで磨耗しやすいので、特にコネクターとかスイッチとか摺動する部品とかに使用する時には、これまでは、硬さを増すために他の金属を混ぜ合わせていたのです。ところが、そうすると、今度は銀の持ち味であった電気特性が落ちてしまう。銀の電気特性を生かしながら耐久性を高める方法が求められていたんです」

ということは、CNTを銀めっきに混ぜると、そこがクリアできるということ?

「その通り。だんだん勘がよくなってきましたね(笑)。今回当社が開発したCNT複合銀めっきは、硬さが通常の純銀めっきより30%向上したのに、体積抵抗率の変化は見られませんでした。物質の導電性を示す尺度は一般的に「抵抗」―Ωってやつですね―が用いられていますが、この抵抗を1cm×1cm×1cmの単位体積あたりで示した数値が体積抵抗率です。硬さは向上したけど、体積抵抗率は変わらなかった。要するに、純銀めっきの電気特性の良いところをそのまま引き継いで、より硬い銀めっきができるようになったというわけです」

そのことって、やっぱりすごいことなんでしょうねぇ?

「もちろん! 現在は電子部品はマイクロ化し、超微弱電気で動いていますから、硬さや体積抵抗率のホンのちょっとの違いが、部品の性能を大きく左右することになるのです。当社のようなめっき業者はその技術でしのぎを削っているといっても過言ではないと思いますよ。それに、良い数値が出たのは、硬さと熱伝導性だけじゃないんですよ」

へ~そうなの。ではそれは次の時に聞かせてください。

通常の銀めっき(×10000)

通常の銀めっき(×10000)

 

毛のように生えているのがカーボン・ナノ・チューブ(×10000)

CNT複合銀めっき毛のように生えているのがカーボン・ナノ・チューブ(×10000)

 

企画・取材 毛賀澤明宏